悩む女性たち

てんかん(癲癇)は、脳細胞に起こる異常な神経活動(癲癇放電)によって繰り返し引き起こされる「脳の慢性神経疾患」で、年齢や性別、人種などの関係なく発症します。てんかんの起こるメカニズムは、大脳の神経細胞であるニューロンに、突然電気的な興奮が起こることで発症します。

脳のイラスト

発作が起こった際の症状は、大脳のどの部分で電気的興奮が起こったかによって変わってきます。主な症状とてしては、脳の一部が興奮状態になる「部分発作」と、脳の大部分または全体が興奮状態になる「全般発作」に分類され、更に「意識障害の有無」「発作症状」「発作型(単純部分・複雑部分)」「発作の対称性」などで細かく分類されます。

近年では、車の運転中にてんかんの症状が起こり、人身事故を起こすという悲劇も何件か起こっています。「自分は健康だから大丈夫」という自信があっても、誰にでも起こり得る疾患であるため、基本的知識は備えておくことをおすすめします。

間代発作と強直発作の紹介

てんかんの発作は、まず最初に「部分発作」と「全般発作」に分類されます。部分発作は、脳の一部で電気的興奮が過剰に起こる発作です。部分発作には、発作が起こっても意識がハッキリとしている単純部分発作と、意識障害が起こる複雑部分発作に分けられます。

部分発作

単純部分発作では、本人の意識がハッキリとしているため、発作の初期段階から収束するまでの一連のステップを覚えている場合が多いです。電気的興奮が起こった脳の部分によって、手足がつっぱる・けいれんが起こるなどの運動機能障害や、チカチカしたり光る一点が見えるなどの視覚障害、カンカンという音が聞こえるなどの聴覚障害が起こります。

部分発作には、複雑部分発作という種類もあります。この複雑部分発作は、意識障害が起こりますが倒れることはありません。症状としては、意識減損発作(動作を急に停止してボーっとする行動など)や、自動症(周辺をフラフラ出歩く、手を叩く、口をもぐもぐさせるなどの行動)を起こします。

全般発作

全般発作は、大脳の両側で電気的興奮が起こる発作で、全般発作の場合はほとんどの患者さんは、意識が無くなってしまいます。

全般発作のうち「間代発作(かんたいほっさ)」は、膝を折り曲げた状態で足がガクガクと一定に伸縮を繰り返すけいれんが起こります。この時の脳波は10Hzの速波(周波数の速い波形)と徐波(周波数の遅い波形)になりますが、場合によっては棘徐波(きょくじょは=尖った波形と緩やかな波形が合わさった脳波)が起こります。けいれんが起こっても数十秒で治まる場合が多いですが、1分以上継続する場合もあります。

全般発作には「強直発作」という症状もあり、発作が起こると突然意識が失われ、同時に無意識に口を固く食いしばり、手足をピンと伸ばした状態で硬直します。突然起こるため、大怪我の危険性があるほか、呼吸が数秒間~数十秒間止まる場合もあります。

間代発作と強直発作の両方が起こる「強直間代発作」もあります。強直間代発作は、突発型の全般性てんかんで起こる場合と、症候型の全般性てんかんで起こる場合があります。また、部分発作から徐々に全般化して強直間代発作を起こすこともあります。

発作が起こると意識が薄れた状態になり、もうろうとしてきます。更に、間代発作の影響でけいれんが起こったり、強直発作の影響で手足が硬直したりと様々な症状が起こるため、怪我や事故を起こす危険性が高まります。患者の中には、強直間代発作が起こる直前に、言葉では表現しにくいような発作の予兆のようなものを感じる人もいますが、ほとんどの人は何の予兆を体験することなく意識を失います。

強直間代発作の症状の進展の仕組みは、突然急激な筋肉の収縮・硬直が起こって地面に倒れます。その際、口を強く食いしばったタイミングによっては、舌を噛んでしまうケースもありとても危険です。また、体全体が強く硬直することで失禁してしまうこともあります。強直発作が治まった後には、間代発作によるけいれんが起こり、その後に意識障害が出てきます。

強直間代発作が治まった後は、約30分~1時間の眠り(自然睡眠または終末睡眠という)が起こるケースがあります。自然睡眠から覚めるとてんかんは治まっているので、いつも通りの日常生活に戻ることができます。

部分発作から始まり、複雑部分発作の症状が出た後に強直間代発作へと変わるケースもあります。この症状を二次性全般化発作といいます。複雑部分発作とは、意識障害を伴うてんかんで記憶障害もみられます。

欠伸発作とミオクロニー発作の紹介

全般発作には、その他に「欠神発作」と「ミオクロニー発作」などがあります。欠神発作は、突然数十秒間にわたって意識を失ってしまう発作ですが、その際けいれんを起こしたり、硬直して倒れるなどの症状は出ません。ただし、他人と会話中に欠神発作が現れると、話が途切れ途切れになったり動作が止まったりします。周囲の人たちがてんかんへの知識が無いと、欠神発作の症状を単に集中力が無い、注意力が無いなどと理解されてしまう可能性があります。

欠神発作は、主に就学前や6歳~12歳ごろの学童期の女児に多く発症する傾向にあります。この時期は、新しい友達がたくさんできる時期ですが、クラスに少しでも他の子達と違う子がいると仲間外れにしたり、いじめの対象とされたりと、友達関係で問題が起こり始める時期でもあります。このような時期に欠神発作が出てしまうと、10歳前後の子供達には理解することが難しく、友達関係を築くのが困難になることも考えられます。欠神発作で起こる症状としては以下が挙げられます。

  • 突然意識が無くなり目がうつろになる
  • 眼球が上側に移動したままになる
  • まぶたにけいれんが起こる(1秒間に3回程度)
  • 今まで行っていた動作が止まる
  • 呼びかけに対する反応が鈍くなる

また、欠神発作には6つの型があり、いずれの型においても左右対称で規則正しい、周波数3Hzの棘徐波複合が現れます。6つの型は以下が挙げられます。

  • 意識障害のみが現れるタイプ
  • 意識障害+自動症(無意識のうちに起こる様々な動作)が現れるタイプ
  • ミオクロニーけいれんを伴うタイプ
  • 脱力的要素を伴うタイプ
  • 強直発作を伴うタイプ
  • 強直発作を伴うタイプ

特に小学生が欠神発作を起こした場合、症状が脱力的要素などのようなタイプであると、先生によってはてんかんの知識がなく、単に「授業中の集中力が低下している」と勘違いされることも多いです。

ミオクロニー発作とは、全身または手足など体の一部分の筋肉が、瞬間的に収縮する発作をいいます。けいれいんが一瞬であるため自覚症状を感じないこともありますが、繰り返して起こることもあり場合によっては、1秒~2秒程度の短時間において意識を失うこともありいます。

ミオクロニー発作は単独で発作が起こることが多いですが、全般性のもの(強直間代発作)を伴うものもあります。体幹や様々な部位の筋肉、また顔面などに集中して症状が出ることもあります。

ミオクロニー発作の脳波としては、多棘徐波や棘徐波になることが多いです。発作が治まっている間であっても脳波では突発波が出現しているため、脳波上で突発波が確認できたからと言って必ずしもミオクロニー発作が起こっているとは限りません。

ミオクロニーけいれんは、外的刺激によって引き起こされることが多いです。例えば、まぶしい光や突然の大きな音などがあります。特に朝方の日の光によって誘発されることが多く、光には敏感です。

ミオクロニー発作を伴うてんかんには、乳児良性ミオクロニー・乳児重症ミオクロニー・若年ミオクロニー・ミオクロニー欠神・ミオクロニー失立てんかんなどがあります。

てんかん発作は遺伝する病気?

遺伝子のイラスト

てんかんが起こる原因は様々あり、その原因によって「特発性てんかん」と「症候性ていんかん」とに分類されます。

特発性てんかんとは、あらゆる角度から原因を究明しても脳に異常が見受けられず、発症原因が不明とされるてんかんのことで、生まれつきてんかんになりやすい性質があると考えられています。てんかんの多くは遺伝とは関係が無いとされていますが、特発性の中には遺伝によりてんかんになる可能性が高いという考えもあり、現在も研究が進められている状況です。

症候性てんかんとは、脳に起こった何らかの障害や疾患によって引き起こされるてんかんで、原因が明確になっているものを指します。原因として考えられるのは、出生時に脳に損傷を受けた、低酸素、髄膜炎、脳炎、脳出血、脳外傷、脳梗塞、アルツハイマーなどです。こうした脳の疾患によって、脳の一部が損傷したり障害を受けることで起こります。症候性の場合は、遺伝とは関係が無いとされています。

てんかんと遺伝の関係においては、少数のてんかん症候群以外のほとんどのてんかんでは、遺伝はしません。「発作の起こりやすさ」においては遺伝する可能性があるとされていますが、この場合でも原因は他にあり、それが引き金になっているともいわれています。

最近のてんかんの発症率に関する研究によると、てんかん患者さんの子供がてんかんを発症する確率は4%~6%で、これはてんかんを発症していない人の2倍~3倍の発症率だとされています。ただし、症状の種類が様々であるため、タイプによって発症率は変わってきます。

日本で行われた調査によると、てんかん患者の子供が発症した確率は4.2%で、その内訳は特発性てんかんが11.0%、症候性てんかんが3.2%でした。また、発症する脳の部分では、全般性が9.2%、部分性が1.8%~5.9%という結果が出ました。

タイプによっては治療によって完治するものとしないもの、完治は難しいが発作を抑えられるものなど、様々あります。完治しないタイプでは、今後もずっと付き合っていかなくてはならないため、将来を不安視してしまう方も多くいます。

特に、結婚を控えている方や今後結婚する可能性がある方、また妊娠を控えている方などでてんかんを起こす可能性がある場合には、自分一人の問題ではなくなるため「遺伝カウンセリング」を受けて、今抱えている不安や将来のことについて、専門家に相談にのってもらうようにしましょう。

遺伝カウンセリングとは、遺伝病の専門家である「認定遺伝カウンセラー」が、遺伝子の異常で起こる遺伝病や先天性異常で悩んでいる患者さんやその家族に寄り添い、病気に関する様々な悩みや相談に応え、快適な日常生活が送れるよう精神的サポートをしてくれます。

1人で悩んでいると精神的にも障害を与えてしまう可能性もあり、てんかんの症状に加え精神疾患の症状によって、日常生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。誰かに悩みや相談をすることによって、精勤的負担が軽減されるほか、自分では思い浮かばなかった改善方法が見いだせることもあります。

てんかん発作に予兆はある?

予兆?

てんかんの発作が起こる前には、予兆が起こる場合があります。予兆には個人差がありますが、どのような症状が起こるのかをある程度把握しておくことで、発作に対する備えができます。

てんかんの予兆は、「発作の初期段階に感じる自覚症状」のことで、いわば初期症状と捉えることができます。どのような予兆が起こるかによって、発作がどこで起こるかがある程度特定することが可能となり、その後の処置がスピーディーに行えることになります。

予兆の主な症状としては、身体感覚症状、視覚症状、聴覚症状などがあります。身体感覚症状は、手足に電気が走ったようにピリピリする、手足が熱い・冷たい、感覚が無い、動かせない、など様々です。視覚症状は、目の前に点や円形、星形、線などの様々な形状が現れ、その色は白や黒の他、カラーの場合もあります。聴覚症状は、カンカン・ブーンブーンなどの機械音がしたり、人の声や様々な音が混じり合った雑音などが聞こえます。

予兆の症状には統一性が無いため、人によってはめまい・頭痛・吐き気(脳の電気信号の乱れから生じる)や、硫黄の臭いや焦げた臭いを感じる嗅覚症状、口の中が酸っぱい・苦い・甘いといった味覚症状、不安感・苛立ち・恐怖感・動悸が激しくなる・脈が速いなどの精神症状などが起こるケースもあります。

予兆が起こるタイミングとしては、これも個人差があるため一概に何時間前とは言えませんが、早い人では発作の起こる数日前、遅い人では半日前~数時間前に起こり始めます

もし、「てんかんの予兆かな?」と思ったら、体に力を入れて緊張感を与えることで、発作を起こりにくくすることができます。こうした対処ができるのも、てんかんの予兆を把握しているからこそのことです。発作を予防するためにも、予兆の症状を把握しておくことはとても大切なことなのです。

予兆は人それぞれ異なりますが、その人に現れる症状はいつも同じであるケースが多いことが分かっています。従って、一度てんかんの予兆が現れた時には、どのような症状が出たかを把握しておくようにすると効果的です。

日常生活に支障を起こさないためにも、てんかんのことを知って、付き合っていくことが大切です。では、これからもてんかんの発作を起こさずに付き合っていくには、どうすれば良いのでしょう。

てんかんとの良い付き合い方としては、「十分な睡眠を取ること」と「抗てんかん薬をきちんと飲むこと」の2つです。睡眠不足は脳に十分は休息を与えることができなくなるため、発作が起こりやすくなります。発作予防に効果的な睡眠時間は7時間程度とされています。

治療薬も日々効能が向上しており、てんかんの薬もその効果がどんどん向上しています。そのため、きちんと抗てんかん薬を飲み続けることで、高い確率で発作を防ぐことができます。

薬は症状が出てから飲むものが多いため、症状が出ないとつい飲み忘れてしまうことがあります。てんかんにおいても同様で、発作が起きていないからと止めてしまったり、飲み忘れがちになりますが、それが結果的に発作を引き起こしてしまうためきちんと飲むようにしましょう。